2021.07.01
曇天の空幕の下、今日も高野から富貴へ。
867メートルの天界から550メートルの山間へ下り落ちる路は、クネクネと幾重にも曲がり、今日のようにどこまでも厚い雲が山塊を包むと、それらを繋ぐ谷間からは白煙のように霧が立ち籠める。
今朝からの強い雨は、山路に切立つ斜面の数カ所に岩清水を吹かせ、その水は僅かな小川のように坂路を流れ落ちる。
やがて水は「丹生」と呼ばれる川に流れ落ち、川は土を飲み込み茶の濁流となって、飛沫を上げる。
雨で脆くなった岩壁は路のあちこちに尖った石片を転がせ、車は時速40キロを超えて下り落ちながらも、それらを避けながら進まないと危うい。
ただ、山肌に繁茂する苔は新たな翠を蓄え、山上から滴る水を得て生き生きと映える。
木々の緑の上には新たな翠がそれに負けじと芽吹き、また濃い緑界を重ねていく。
その路の途中で、小さな鳥が車の行く手を遮るように突然横切ると、また路面を舐めるように車の前に飛び込んできて、スイスイと、小さなジャンプを繰り返しながら路を先導する。
それは、まるで路先案内をするかのように何時までも何十メートルも飛び、やがて諦めたように進路を逸れる。
この路を通いだして既に半年が過ぎるが、何時通っても新鮮だ。
聞けば、昔から高野山と富貴の間には何某かの確執があるようで、中々関係が回復されないとのこと。しかし、そんなことには関わりなく、高野と富貴の山は何時も私を包んでくれる。きっと、お山は『愚かな人間どもめ』と嘲笑っているだろう。
お山は深い。
そのお山の懐に抱かれ、蝋燭が消えるように果てられたら...いいだろうが、篠田桃紅さんの境地には中々届かず、独りでいることが試される。
それでも、明日も高野と富貴を通おう。
お山はいつも私を迎えてくれる。
0 件のコメント:
コメントを投稿